今さら言うまでもなく、折本 里香(おりもと りか)とは特級術師である乙骨 憂太(おっこつ ゆうた)に憑依していた「特級過呪怨霊」(とっきゅうかじゅおんりょう)である。その強さは、同じ特級術師である夏油 傑(げとう すぐる)の奥義「極ノ番・うずまき」を正面から捻じ伏せるほどであった。
目次(五十音順)
里香とリカの違い
しかし、夏油との戦いが終わった後に里香は解呪(解放)され、その霊魂は消失(昇天)している。その結果、乙骨は術師として最下級の四級まで一旦は降格している。
【参照】
『降格と再昇級』
『降格と再昇級』
それから約10ヶ月後の”渋谷事変”の後、呪術総監部から”宿儺の器”である虎杖 悠仁(いたどり ゆうじ)を処刑せよと命じられた乙骨が、魔窟と化した東京で虎杖と交戦した際、驚くべき事に「リカ」とカタカナで呼称する式神のようなモノを召喚している。
はたして、この「リカ」とは一体、どのような存在なのだろうか?
術式化した里香の外殻=式神化
結論を述べると、解呪の際に昇天したのは折本 里香の「人格」部分のみであり、「里香」が顕現していた際に呪力で構築されていた「外殻」(ボディー)部分が術式化して乙骨の手元に残った状態が、カタカナ呼びの「リカ」である。そもそも、乙骨自身が(無意識の内にであれ)折本 里香の霊魂を現世に引き留めていたのであれば、顕現時の外殻(ボディー)部分も乙骨自身の呪力によって形成されていた可能性の方が高い。
従って、「里香」の役割が、あくまでも乙骨の呪力イメージの「増幅」であったとするならば、術式化して乙骨自身の肉体に刻まれるのは単に時間の問題であったと言える。
近接戦闘
里香解呪後の乙骨は、夏油との交戦時同様に『刀』をメインの攻撃手段としている。しかし、当時との大きな違いは、乙骨が生来的に持っていた「五条よりも多い呪力量」を完璧にコントロールできるようになった事である。
その結果、実際に交戦した虎杖いわく、「全ての攻撃が決定打に成り得るし、全てのダメージを最小限に抑えられる」という攻防一体の性質を発揮するに至っている。
反転術式
夏油戦の際に負傷した狗巻と禪院 真希を反転術式によって治療していたが、呪術総監部からの命令で処刑人として虎杖を追跡した際にも、心臓を刺して殺した直後に修復し蘇生させたり、脹相(ちょうそう)の赤血操術の毒によって麻痺していた禪院 直哉(ぜんいん なおや)を治療している。
これにより、反転術式自体は式神化した「リカ」の状態に関係なく、生得的に行使できる事が明らかとなった。
式神「リカ」との接続と使用できる術式
式神術として残された「リカ」は、それまでと同様に乙骨自身に帯同し自由に姿を消したり現れたりする事が出来る上に、口頭による命令で直接攻撃などを行う事もできる。ただし、この状態ではボディーの全身を露出(顕現)させる事は出来ず、術式発動などの能力を100%発揮する事も出来ない。
式神「リカ」の全ての能力を発動する為には、下記に示すように呪術的な「接続」をする必要がある。
媒介としての指輪
乙骨が式神「リカ」の能力を100%引き出す為には、幼少時に折本 里香から婚約の証しとして貰った「指輪」を装着する必要がある。これによって呪術的な接続が完了し、以下の能力を行使する事ができる。ただし、接続には5分間という制限時間が設けられている。
- 「リカ」の全身完全顕現による攻撃
- 「リカ」に備蓄されていた呪力の供給
- 「リカ」に収納されていた呪具の取り出し
- 模倣(コピー)した術式の行使
- 領域展開
完全顕現による攻撃
そもそも、呪術高専に入学した当初の乙骨は、五条のアドバイスに従って「指輪」を通して「里香」からの呪力供給を受け、コントロールする修行をしていた。その結果、夏油 傑の襲撃時には完全に顕現した状態の「里香」をほぼ100%自在に操るに至っている。この事から、指輪の装着と里香の完全顕現は、そのまま発動条件として乙骨の肉体に刻まれ、式神化した「リカ」を召喚する際にも受け継がれたものと思われる。
備蓄呪力の供給
これも、上記の完全顕現と同様に指輪を呪力の通り道(パイプ)とした上で、「里香」からの呪力供給を受けるという仕組みが、そのまま「リカ」に継承されたものと思われる。もっとも、乙骨自身が生まれ持った呪力総量が「五条より多い」のに、更に外部から供給を受けるという仕組みに違和を感じなくもない。しかし、やはり対戦した虎杖いわく、通常の近接戦闘時にさえ「刀を含め全身から、常に呪力が立ち昇ってる」という、まるでターボエンジンのようなハイコスト・ハイパワー仕様の運用スタイルが乙骨を特級たらしめているのも、また事実である。
もしも、乙骨に弱点らしい弱点があるとするならば、呪力の消費量を最小限に抑えた「省エネ仕様」の戦い方は出来ない…という事ではないだろうか。
領域展開・真贋相愛(しんがんそうあい)
羂索が日本全国に展開した「バトルロイヤル結界」とでも言うべき”死滅回游”、その内の一つである「仙台コロニー」に於いて、乙骨は過去の時代を生きた術師の「受肉組」である石流 龍(いしごおり りゅう)、烏鷺 亨子(うろ たかこ)と会戦した。
その際、三者が同時に領域を展開しようとしたものの、そこにゴキブリの呪霊である黒沐死(くろうるし)が割って入った為に結界が崩壊し、乙骨の領域展開の詳しい内容は分からず終いとなっていた。
新宿に於ける宿儺との最終決戦に於いて、遂にヴェールを脱いだ乙骨の領域展開の内容は、以下の通り。
- 領域が展開されると、その効果範囲の地面に無数の”日本刀”が立ち並ぶ。
- その日本刀の一本一本に、乙骨が過去に模倣(コピー)した他の術師の術式がセッティティングされており、任意の一本を地面から引き抜いて対象を攻撃する事により、その術式効果を発動できる。
- また、日本刀一本一本に込められた術式とは別に、領域全体(結界全体)に対して過去に模倣した任意の術式が「必中術式」として設定されており、実際に体験した宿儺の言及によれば、それは「天使の術式」であるとされる。
【備考】
当然の事ながら、領域に付与されている必中術式が「天使の術式」であるという宿儺の言及は、乙骨が”天使の器”である来栖 華(くるす はな)と出会って以降にリセッティングしたものであり、それ以前に於いては別の術式が「必中術式」としてセッティングされていたものと思われる。
掌印
乙骨が領域を展開する際に手で結ぶ印は、「荼吉尼天印」(だきにてんいん)と呼ばれる形である。